近年、会社経営者から人気を集めているキャリアアップ助成金制度。

これは、働き方改革の一環として実施されている制度のひとつです。助成金というのは、国から交付される金銭で、返還不要になっています。申請条件などについて、他の助成金などと比較して、クリアしやすい内容になっていると評判です。

今回は、このキャリアアップ助成金制度とその申請に伴うチェックリストについて解説します。
 

キャリアアップ助成金とは?

キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、いわゆる契約社員ですね、やパート・アルバイト社員、派遣社員など非正規労働者を、企業内でキャリアアップさせることを目的とした制度です。

簡単にいいますと、キャリアアップさせることができれば、国から助成金として一定の金額が支給されるといういう制度になっています。

現在、人手不足や働き方改革推進施策によって、非正規労働者を正社員に転換させる動きが出てきています。

この動きは、まさにキャリアアップ助成金制度の目的のひとつとなっているもので、正社員に転換してもらうことで、長期的な雇用継続が実現し、労働者の生活や経済の安定になるというのです。

キャリアアップしてもらうには、正社員にする、ということだけではありません。このキャリアアップ助成金制度は、いくつかのコースに分かれていることも特徴のひとつです。

そのため、正社員にできなくても、その他のコースに該当する施策を、自社企業で実施することができれば、助成金支給の対象となることができます。

コースは、以下の7コースになっています。
・正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・健康診断制度コース
・賃金規定等共通化コース
・諸手当制度共通化コース
・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
・短時間労働者労働時間延長コース

これらの7コースのうち、できそうな施策から取り組んでみてはいかがでしょうか。

もっとも、キャリアアップ助成金を受けるためにはいくつかの要件をクリアすることも必要になっています。

たとえば、支給の対象となるのは、中小企業事業主に限定されているので、注意が必要です。

中小企業事業主とは、たとえば、飲食店を含む小売業の場合は、資本金・出資の総額が5,000万円以下または常時雇用する労働者の数が50人以下と規定されています。

サービス業の場合は、5,000万円以下または常時雇用する労働者の数が100人以下となっています。

実は要件を満たしていなかった、とならないよう、気になる場合は、管轄の労働局へ問い合わせてみることをおすすめします。
 

必要書類は?

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キャリアアップ助成金を申請するためには、キャリアアップ計画書を会社がある場所を管轄する労働局に提出します。

そのうえで、コースに応じた必要書類を提出することになります。平成30年以降に実施したとして、最も人気の高い正社員化コースの必要書類をみていきましょう。(https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin/118530/120558.html より)
 

正社員化コース

・キャリアアップ助成金支給申請書
・正社員化コース内訳
・支給要件確認申立書
・支払い方法・受取人住所届
・キャリアアップ計画書の写し
・労働協約の写しまたは就業規則の写しまたはその他準ずるもの
・就業規則の写しまたは労働協約等の写し
・対象労働者の転換前後の雇用契約書または直接雇用後の労働条件通知書または雇用契約書の写し
・対象労働者の賃金台帳の写し
・賃金5%以上増額に係る計画書
・対象労働者の出勤簿またはタイムカードの写し
・中小企業事業主であることの確認書類

その他多様な正社員の転換など、特殊な場合は、それぞれ追加書類が必要になっています。

なお、これらの書類については、厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801.html )でダウンロードすることが可能になっているので、利用して申請することができるのです。
 

申請方法は?

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キャリアアップ助成金の申請方法をどのようにするか、具体的にみていきましょう。こちらも、最も人気の高い正社員化コースについて説明していきます。
 

キャリアアップ計画書の作成

そもそも、キャリアアップ助成金については、いきなり申請することはできません。まず、キャリアアップ計画書を作成しなければならないのです。

この計画書は、労働組合などの意見を聴いた上で作成することになります。よく分からない場合は、労働局などに事前に相談して作成することもできます。労働局には、キャリアアップ計画書作成援助を実施しているからです。
 

キャリアアップ計画書を提出

作成したキャリアアップ計画書を会社の管轄にある労働局に提出します。これを労働局は認定するのです。認定されない場合もあります。
 

計画に基づき実行

キャリアアップ計画書に基づいて、会社は実行に移していきます。

まず、就業規則等に正社員等への転換ができる規定がない場合は、新たにこの規定を新設することになります。どのようにしたら正社員になることができるのか、という決まりを作るのです。就業規則等の改定は、一定の法律の手続きに則って行う必要があるので、注意が必要でしょう。

就業規則等の改定を行ったら、その条件を満たす非正規労働者の社員について正社員等へ転換します。規則だけ作っただけでは、助成金を受け取ることができません。きちんと正社員へ転換した実績が必要になります。
 

転換後6ヶ月の賃金支払い

正社員に転換したあと、6ヶ月の賃金の支払いが必要になります。なお、転換前と比較して、その賃金額については、5%以上の増額している必要があるのです。そもそも正社員に転換しても賃金が同じならば、責任や負担だけ増えただけとなるので、労働者に不利といえるのではないでしょうか。

また、正社員と契約社員でも、賃金格差があるのが現状です。こうしたことから、5%の増額を規定しています。助成金の支給を受けることができれば、その増加分を助成金で補填することができます。
 

支給申請

こうして、正社員へ転換した実績を作り、ようやく支給申請をすることができるのです。支給申請も、管轄の労働局へ必要書類とともに提出します。
 

支給審査・支給決定

労働局で提出した申請書類などをみて、審査していきます。審査に通れば、支給決定となり、助成金が支給されます。

以上のような流れになっています。なお、注意点としては、キャリアアップ計画書の期間内にキャリアアップに取り組んだことが必要になっていることです。計画書を提出する前や期間を過ぎてしまった場合は、助成金支給の対象になることができません。
 

まとめ

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キャリアアップ助成金制度は、非正規労働者を正社員に転換するだけで、一定の助成金を受け取ることができるという、ハードルが低めの助成金といわれています。

このため、取り組んで助成金を支給してもらおうという事業者も多くなっているのです。もっとも、不正防止のために、かなり手続きがきっちりしているため、きちんと手順を踏まえて行う必要があることに注意が必要です。

会社は助成金を得ること、労働者は正社員になること、ともに利益があるキャリアアップ助成金制度、ぜひ前向きに取り組むことを検討してみてはいかがでしょうか。