仕事をしながら、大切な家族の介護をしなければいけない状況になった時、あなたはどうしますか?
働き世代の30代・40代は、親世代が60代~70代となるので介護問題がどんどん現実的なものになってきます。
仕事と介護の両立が難しく、やむを得ず退職を選ぶ方もいるかもしれませんが、そんな時は一度会社に相談してみましょう。
今は「介護休暇」という制度があるので、それを活用してみるといいかもしれません。
「介護休暇」とは?
「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で規定されている、労働者が介護と仕事を両立するのをサポートするための制度が「介護休暇」 です。
有給休暇以外で介護のために仕事をお休みすることができます。
大切な家族の介護をするためにお休みを取らないといけない時のために、覚えておくべき制度ですね。
介護休暇の対象となる労働者は?
介護休暇を取得するためには、以下の条件を満たしていなければいけません。
- 雇用期間が6ヵ月以上
- 要介護状態の対象家族を介護する、正社員、パートタイマー、アルバイト、契約社員
要介護状態とは、“身体上・精神上の障害や病気などによって、2週間以上の期間にわたって常時介護が必要な状態”だそうです。
つまり、下記の人は介護休暇の対象とはならないので注意が必要です。
- 日雇い労働者
- 雇用期間が6ヵ月未満
- 1週間のうち所定労働時間が2日以下の方
介護休暇の対象となる被介護者の条件は?
介護休暇が適用される家族は以下の通りです。
- 配偶者
- 子
- 実父母
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
「配偶者」とありますが、事実婚でも認められるそうです。多様な結婚の在り方が実現してきた現代に対応していますね。
介護休暇の「介護」の範囲は?
直接的な介護から、間接的な介護までが「介護」の対象と見なされます。
- 食事や排せつなど日常生活における直接的な介護
- 病院への送迎
- 家事や買い物
- 事務手続きの代行
被介護者は自分で家事をしたり、買い物・病院に行ったりすることが難しいので、家族のためにそれらを行うことが介護として見なされるのは嬉しいですね。
「介護休暇」の期間は?
介護休暇を利用することで、介護が必要な家族が1名につき、__1年で5労働日__までお休みを取ることができます。
父母など対象家族が2名いる場合は、1年間で最大10労働日となっています。
ただし、対象家族が3名や4名など2名以上いる場合でも、上限は10日ですので注意してくださいね。
また、介護休暇は1日単位のほか、半日単位でも取得することができます。
つまり、「午前中のみ病院へ付き添って、午後は会社で仕事をする」ということも可能です。
しかし、下記の条件に当てはまる場合には半日休暇を取ることができず、1日単位での取得となります。
- 1日の所定労働時間が4時間以下
- 半日単位で介護休暇を取得することが難しい業務を担当している
介護休暇中の給与は支払われるの?
有給休暇以外の休暇ですので、休んだ分のお給料が出るのかが気になるところ。
残念ながら、法律では介護休暇中の給与支払いについて、企業側に定められてはいないのです。
企業によっては給与の数%を支払うケースもあるようですが、無給扱いとなる会社も多いようで、休暇中の賃金については企業側の裁量に委ねられていることが実情です。
そのため、「介護休暇を取得するよりも有給休暇にしたほうがいい」と有給休暇を取得して家族の介護をしている人も多いそうです。
「介護休暇」の取得方法は?
介護休暇は、書面などでの申請は特に必要なく、口頭で申請することで取得することができるとされています。
つまり、対象家族が朝に突然体調が悪くなって介護が必要となった場合でも、当日に申請することで取得できるのです。
しかし、企業によっては申請書などを用意している場合が多いようです。
内容は、対象家族との続柄や、対象家族を介護しなければいけない理由を記入します。
そのほかに、診断書や要介護認定の通知書などの提出書類を用意しなければいけないケースもあるようなので、介護休暇を取る可能性が出てきたら事前に確認しておきましょう。
また、介護休暇は育児・介護休業法で定められている労働者の権利なので、申請を受けたら企業側は断ることはできません。
また、介護休暇を取得したことを理由にして不当な扱いをすることも禁じられています。
「どうせ、うちの会社では介護休暇は取れないだろう」と諦めずに、介護が必要になったら会社側に相談してみましょうね。
「介護休暇」と「介護休業」との違いは?
介護休暇と似た制度で「介護休業」という制度もあります。
介護休暇と介護休業の違いは主に3つあるので、簡単にご紹介します。
【違い1】休暇日数
介護休業では、対象家族1名につき1年間で最大93労働日までお休みすることができます。
介護のために長期間休まなければいけないということになった場合は、介護休業を取ることをおすすめします。
【違い2】申請方法
当日申請も可能な介護休暇に対して、介護休業は事前に申請しておかなければなりません。
介護休業の開始予定日と終了予定日を、開始予定日の2週間前までに申請することで介護休業を取得することができます。
前もって計画を立てて介護休業を取得するようにしましょうね。
【違い3】介護休業給付金
介護休暇と同様に、賃金の支払いが義務づけられていない介護休業。
しかし、介護休暇よりも長期間のお休みとなるため、金銭面の心配がありますよね。
そんな時のために、「介護休業給付金」という制度があります。
介護休業給付金では“休業開始時賃金日額×支給日数×67%”が給付金として支給されます。
93日間も無給だと金銭的にも非常に厳しいので、給付金を得られるととても助かりますね。
しかし、この介護休業給付金制度はいくつかの注意点があります!
- すでに休業期間中の場合は申請できない
- 介護休業が終了してから支給されるため、すぐに得られるわけではない
- 雇用保険加入者のみが対象
- 介護休業開始日から10日以内に休業開始時賃金証明書を提出する必要がある
- 65歳以降の介護休業開始は対象外
- 介護休業開始時点で、介護休業後の離職が決定している場合は対象外
期間限定雇用者が介護休業給付金制度を利用する場合には、下記の条件を満たす必要があります。
- 1年以上雇用されている
- 休業開始予定日から起算し、93日を超えて引き続き雇用の見込みがある
介護休業給付金制度は正社員以外でも対象とはなりますが、さまざまな条件があるので、きちんと事前に確認しておきましょう。
まとめ
労働者の介護と仕事の両立を叶えてくれる「介護休暇」制度。まさにワークライフバランスを実現する制度だと思います。
少子高齢化の社会では、今後どんどん介護をしなければいけなくなる労働者が増えてきます。
「自分の身内はまだ大丈夫だろう」と思わずに、大事な家族のサポートのためにも知っておいて損はない制度です。
取得日数や給付金に違いがある「介護休業」と組み合わせて、介護と仕事の両立を実現しましょう!
また、企業側も介護休暇についての社内体制を整える必要が増してきます。
「介護」というライフイベントがあっても労働者が安心して働けるよう、介護休暇・介護休業の制度について、事業主は今一度考え直す必要があるでしょう。