仕事に復帰する前提で産休に入ったにもかかわらず、復帰できそうもないという場合があります。これは、赤ちゃんの体調やご自身の体調などが原因の場合もあれば、パートナーが転勤になってしまい、帯同することになったなどさまざまです。しかし、産休中に退職する場合、気をつけるポイントもあります。この記事では、そうしたポイントなどを中心にみていきます。産休中に退職するかどうか迷っている方は参考にしてみてください。
産休中・産休後の退職はあり?
産休中や産休明けに退職してもいいのでしょうか。そもそもできるのでしょうか。結論としては、もちろん産休中や産休明けに会社を退職することはできます。しかし会社に迷惑がかかるという点は留意する必要はあります。もちろん法律的に退職することは違法ではありません。しかし、倫理的な問題やビジネスパーソンとしての問題がある、ということです。
仮に退職していなくても産休から育休に入り結局会社にいないから同じと思うかもしれませんが、会社側としては、少なくても産休や育休から明けたあとに働いてもらえるから、新しい人材を募集する必要がないと考えます。
しかし、急に新たに人材を募集しなければならなくなるためです。人材を募集して選定して、採用に至るまでは、かなりの日数と時間が必要になります。もし仮に産休中に退職と分かっていれば、採用手続きに早期に取りかかることができます。もちろん退職するかもしれないと可能性を伝えていた場合は、仕方がないと思われるかもしれません。いずれにせよ、人材を手放してしまうのは会社として少なからず損害が出ると思ってください。
こうしたことから、退職することはでき、特に法律違反や契約違反になり、それを責められるワケではありませんが、ビジネスパーソンとしては決して褒められる行為ではないと認識すると、限りなくナシといえます。
手当や制度はどうなる?
産休中に退職することは、倫理的な問題があるだけでなく、産休中や産休明けに退職すると、経済的なデメリットもあります。具体的にみていきましょう。
- 出産一時金
出産一時金は、出産したときに健康保険から支給されるお金です。かなりの会社が加入している協会けんぽの場合、1人につき最大42万円になっています。勤務している会社によって、独自に健康保険組合を作っている場合がありますので、その場合は、出産一時金の金額が変わるかもしれません。
これは、出産するにはかなりのお金がかかります。その出産費用を支給してあげようという制度です。病院と手続きを連携している場合が多いため、出産費用の総額を自分で立て替えてあとで請求する必要がなく、42万円を差し引いて差額分だけ支払うようにできることも多くなっています(直接支払い制度)。
もちろん42万円かからない場合は、何も支払わなくても済みます。パジャマレンタルなど、出産一時金に入らない費用については、自分で支払う必要があります。
この出産一時金ですが、退職してしまった場合は、資格喪失日の前日(多くの場合は退職日)まで被保険者というこの保険に加入していた期間が1年以上継続していることが必要で、かつ資格喪失日から6ヶ月以内に出産したときに支給されます。
なお、流産や早産の場合は、妊娠4ヶ月以上の出産である場合、出産育児一時金を受け取ることができます。
もし、パートナーの健康保険に扶養される場合は、パートナーの健康保険組合から、家族出産育児一時金を受け取る手続きが必要となります。
- 出産手当金
出産手当金は、出産の日より前42日、多胎妊娠の場合は98日、出産日後56日まで、支給される手当金です。出産をするにあたり、産休をとり、収入がなくなってしまうため、健康保険から、その補填が支給されるという制度です。勤務しているときにもらえる給与額よりは低くなってしまいますが、働かないと生活できなくなる人もいます。そういった危機を回避するために、この制度があります。
そのため、基本的には産休中に退職してしまうと出産手当金は、支給されないのが原則です。しかし、一定の場合には、退職した場合でも出産手当金を一定期間受け取ることができるというメリットがあります。
一定の条件とは、退職日という資格喪失日の前日までに1年以上継続して健康保険組合に加入していることが必要です。次に、退職日が出産手当金の支給期間内に入っていることも必要です。そのため、出産予定日の42日前に退職してしまうと出産手当金を受け取ることができません。もっとも、産休は、出産前6週間、出産後8週間ですので、法律で定めている産休の期間中の退職ならば、この42日前要件を満たすことにはなります。
また、退職日当日に出勤していないことも必要です。退職するから、引き継ぎのために、勤務してしまうと、対象外になってしまいます。
もっとも、欠勤や公休・有給休暇の場合は、出勤に該当しません。
出産手当金は、給料をもらっていない場合で、1日あたり標準報酬月額(支給開始日以前の12ヶ月間)を平均した額を30日で割って、その3分の2になります。
気をつけるべきポイント
産休中に退職してしまうと、出産手当金を受け取ることができなくなってしまう場合や支給期間が少なくなってしまうおそれがあることに気をつけましょう。
特に、退職後にも支給される要件として、退職日までに1年以上継続して健康保険に加入していることが必要です。これは、出産手当金は、もともと在職中にある人の経済的なデメリットを保証する制度だからです。
また、育児休業給付金という制度があります。こちらは育児休業中のママに健康保険組合から支給される制度です。こちらは産休中に退職してしまうと一切受け取ることができなくなります。
さらに、産休中は、協会けんぽの場合など健康保険料の支払いが免除されます。しかし、退職してしまうと国民健康保険などの加入することになるか、パートナーの健康保険の扶養に入ることになれば、その保険料を支払わなければならなくなります。
こうしたことから、特に支障がない場合は、産休中に退職するのは避ける方が望ましいということができそうです。
まとめ
産休中は、赤ちゃんの誕生だけでなく、不眠不休で育児に慣れない毎日が続き、仕事について考えたくないと思い、退職を検討するかもしれません。
しかし、働くママのために、育児休業手当など、会社を休んで給料がもらえないことでのデメリットを補う制度があり、これを利用できるのは、きちんと働いてきたからで、これからも働いてもらいたいという会社があるからです。
これは、自営業の場合の国民健康保険では受け取ることができません。このようなことから、産休中に退職するのはできる限り避けるべきでしょう。
もちろん退職する事情はさまざまです。家族できちんと話し合って決めていくことをおすすめします。
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